光文社新書「受験うつ」第4章より
・・・・ バンデューラ教授はプラスの効力予後を抱くことを「自己効力感(self-efficacy)」と名付けました。
受験勉強を一歩一歩、着実に前に進めていくには、この自己効力感を広げていくことが何よりも大切です。
ほとんどの受験生は、学力アップという受験勉強の結果だけを意識して勉強しようとします。
しかし、そうすると、効力予後と結果予後の二つがごちゃ混ぜになってしまうので、自己コントロール力はなかなかアップしません。
これを打破する最も良い方法は、効力予後、つまり自己効力感だけに意識を集中して勉強することです。
「自己効力感トレーニング」の方法
自己効力感を高めるためには、確実にできることだけに課題を絞ることが重要です。
やろうと思っても、結果的にできなければ自己効力感が低下してしまいます。
だから、無理をして高い水準の課題に挑戦するのはあえて避けるべきなのです。
逆に、確実にやり遂げられることだけに絞れば、実行できたという自信を通して自己効力感が高まります。
私がおすすめしている方法は、まずは、ものすごく簡単なことから始めるということです。
簡単なことでも、それができれば、ほんの少しだけですが自己効力感が高まり、意欲が出てきます。
その意欲を利用すれば、次はさらに高いハードルに挑戦でき、それを達成することで自己効力感と意欲は、もう一段階、アップさせられます。
こうしたプロセスを繰り返しながら、徐々に課題の水準を上げれば、誰でも無理なく意欲を高めることが可能になるのです。
以上の原理を受験うつの対策に応用したのが、「自己効力感トレーニング」です。
私のクリニックでは以下のような5つの段階を経て、自己効力感を高める学習トレーニングを行ってもらっています。
第一段階:机に向かって椅子に座り続ける(10分程度)
ベットの上で寝転がっていたり、ソファーでくつろいでいたりするのは心地良いことですが、机に向かって椅子に座り続けることができなければ、そもそも受験勉強は前に進みません。
ただし、よほど重症でない限り、 10分程度椅子に座り続けることだったら誰でもできます。
第1段階はこれだけに特化し、やり遂げることで自己効力感を高める第一歩を踏み出しましょう。
間違っても、はじめから無理に勉強しようとは思わないことが大切です。
漫画を読んでも雑誌を読んでも、あるいはボーッとしているだけでも結構です。
とにかく、座り続けるという目標を自分の意志で達成することが課題です。
第二段階:音読する(5分程度)
10分程度、椅子に座り続けることができるようになったら、 ・・・・
光文社新書「受験うつ」第4章より
「受験うつ どう克服し、合格をつかむか」
光文社新書
紀伊國屋本店 ベストセラー達成!
新書販売ランキング1位
<目次>
第1章 増える受験うつ
第2章「受験うつ」のメカニズム
第3章
受験うつは答案用紙に表れる
第4章 間違いだらけの治療法
第5章
親のひと言が子どもを受験うつにする
第6章 うつにならない勉強法
第7章 親のコーチングで結果は出せる
<内容紹介>
未成年のうつ病、しかも、ストレスが増える受験期に突然発症する人が急増している。
子どもと大人では症状が大きく異なるため、親も受験生本人も発症に気が付かないケースが多いのが実情である。
中学受験ではもちろんのこと、高校受験や大学受験で頻発しており、受験生専門外来の私のクリニックにも、勉強が手につかなくなった多くの受験生が来院している。
受験期のうつで人生を狂わさないために、受験生本人が、家族ができることは何か?
また、脳機能から考えたストレス管理や効率の良い勉強法もまとめた、うつ病の有無を問わず受験を控えたすべての方に必見の書。