受験生の目の疲れと肩こり
「受験うつ」を招く脳と心のSOSサイン
長時間にわたって受験勉強をしていると、目の疲れや肩こりになりやすいものです。
どちらも不快な症状なので、良いものではないという認識はあると思いますが、症状が激しい場合は、「受験うつ」(受験期のうつ症状)のSOSサインかもしれません。
そうでなくても、勉強による目の疲れも肩こりも、受験ストレスの影響を色濃く反映しているものなので、こうした症状が激しい場合は、メンタル面のケアも不可欠です。
また、目の疲れも肩こりも、筋肉の中にあるセンサーが脳にシグナルを伝達し、フィードバック作用でストレスを増悪させる性質があることもわかっています。
つまり、こうした症状を放置しておくと、そのこと自体が「受験うつ」を発症したり悪化させたりする要因にもなってしまうのです。
目の疲れも肩こりも、大したことではないだろうと、多くの受験生が甘く見てしまいます。
心療内科医として、さらに問題だと感じるのは、受験生の親も、こうした症状を軽視しがちなことです。
理由は、中高年になっている親の世代では、目の疲れも肩こりも、日常茶飯事だからです。
でも、同じ症状であっても、受験生の若い世代で起きる場合は、中高年で起きる場合に比べて、脳や心が発するSOSサインとしての意味合いがまったく異なります。
このページでは、「受験うつ」や「受験ストレス」で、どうして目の疲れと肩こりが悪化するのか?
脳や心は、どのようなSOSサインを発しているのか?
そして、ご自宅で簡単にできる、目の疲れと肩こりの対策についてご紹介します。
目の疲れと肩こりが連動する理由
目の疲れと肩が凝るというのは、連動する場合が多く見られます。
もちろん、人体の仕組みとしては、単に目が疲れたために、その影響で肩が凝るということもあります。
また、反対に、肩が凝ったために、目が疲れやすくなるということもあります。
ただし、受験生の脳と心にとって心配なのは、両方が同時に起こる場合です。
この二つが悪循環を起こしながら、両方、悪化していくケースでは、やがて「受験うつ」の発症につながる傾向があるのです。
目の疲れと肩こりは、ともにストレスによる自律神経の暴走によって起きる症状です。
意外かもしれませんが、どちらも、もともとは、生命の危機を感じた場合に、生き延びるために、わざとストレス反応を生み出し、それによって、目の疲れも肩こりもわざと生み出しているということが起源です。
そうです。
実は、生き延びるために、目の疲れも肩こりも、わざと起こしている現象なのです。
目的が同じなので、受験ストレスが原因となって、その反応として生じる場合には、目の疲れと肩こりが連動して起きるのは、医学的には当然ともいえます。
どうしてストレスで肩こりが起きるのか?
実は人間など多くの動物は、命を守るためにわざと肩こりにするという性質を持っています。
原始時代に最も命が脅かされる怖い瞬間は、ライオンや狼など肉食獣に襲われることでした。
肉食動物も生きるために必死で、狩りをしているときに怪我をしたら、もう獲物は仕留めることができなくなります。
つまり、肉食動物にとって、怪我は死を意味するわけです。
だから、自分が安全な状態で獲物を仕留めるために、細心の注意を払う必要があるわけです。
そのために肉食獣は、獲物の首に噛みつく習性を獲得しました。
首には、頸動脈という太い動脈と全身の筋肉を動かす神経が通っています。
だから、獲物の首に打撃を与えたら、もう獲物は抵抗できなくなってしまうのです。
逆に命を狙われる側の人間は、それに対抗するため、緊張した場合に、自動的に首の筋肉を硬く固めるように進化しました。
首を硬くするには、僧帽筋や胸鎖乳突筋など、首からに肩かけて広がっている筋肉が攣縮する必要があります。
これが凝りの正体です。
本当は首だけ凝ればいいんですが、ついでに肩も凝ってしまうわけです。
ストレスで眼の疲れが起きる理由
次に、ストレスで、なぜ目が疲れるのか、人体の仕組みを解説しましょう。
目玉の中には眼内筋という筋肉があります。
眼球の内側の筋肉だから眼内筋なんですが、これが、目のピントを合わせています。
普段、ボケっとしているときは、そんなに正確にピントを合わせる必要がありません。
さらに、緊張感がないときは、特に意識をしなくても、近くを見たり、遠くを見たりしているように脳が設計されています。
これによってピントを合わせる距離を変えることで、眼内筋も収縮と弛緩を繰り返すわけです。
このように、無意識のうちに眼内筋のストレッチ運動を行っているので、目の中の筋肉はとても柔軟な状態を保てます。
ところが、肉食動物に襲われたときは、ピントをピタッと合わせて、肉食動物の動きを正確に把握する必要があります。
それで、肩こりと同じように、眼内筋も凝ってしまうわけです。
私たちが感じる目の疲れの正体は、実は、眼内筋の凝りがだったわけです。
肩こりと目の疲れは、一見、全く種類が違う症状のように感じます。
でも、人体で起こっているのは、筋肉が凝って疲労物質がたまるという点で、同じ現象なのです。
受験生に肩こりや目の疲れはどうして起きるのか?
受験生が感じる精神的なストレスは、脳の中の反応が、原始時代に獣に襲われるのときとよく似ています。
入試に落ちるかもしれない恐怖心は、原始人が肉食動物に襲われているときほどは強くないはずだと思われるかもしれません。
ですが、受験生の精神的ストレスは長い期間にわたって続くので、脳や心への負担は、むしろ原始人より大きいと推定されています。
だから、受験ストレスで目も疲れるし、肩も凝るわけです。
さらに、机に向かって勉強するスタイルが、こうした精神症状にとどめを刺しています。
同じ距離ばかり見ているから、目玉の中の筋肉が固まるのは当然です。
また、デスクワークでは、重い頭を前かがみにする姿勢になりますが、これは僧帽筋にも胸鎖乳突筋にも、大きな負担をかけてしまいます。
だから、脳は本能的に、目も肩も、同時により一層筋肉を固くしようとします。
こうした机に向かう勉強の姿勢と受験ストレスが脳内で化学反応を起こすと、激しい目の疲れと肩こりを招くわけです。
眼の疲れや肩こりを予防する方法とは?
目の疲れも肩こりも、どちらも筋肉が固まることによって起きる現象なので、固まらないように、適度に動かせば、それだけでかなり解消できます。
眼の筋肉については、近くだけではなくて、遠くも見る…。
肩の筋肉も、時々肩を回せば、肩こりはかなり抑えられます。
でも、これって、みなさん、知っている予防法ですよね。
だけど、現実には、なかなか実践できていません。
実は、これには、脳医学的な理由があったのです。
それを知っておけば、自然に目や肩の筋肉がほぐれるようになるのです。
対策の決定版は、15分に一度、立ち上がること
目の疲れと肩こりを同時に予防できる決定版ともいえる対策は、机に向かって勉強しているときは、必ず15分に一度は立ち上がって、3分程度は立った状態で勉強することです。
今、学校の授業を生徒ができるだけ立った状態で受ける方式が世界で広がっています。
もともとオーストラリアで始まり、それがアメリカや北欧に広がっています。
テキサスA&M大学が分析したところ、立った状態のほうが集中力が12%アップするという結果が得られています。
そもそも、勉強は座り込む状態で行うより、時々立ち上がったほうが、勉強の効率アップにも効果があるのです。
さらに、立ち上がると机までの距離が遠くなるので、それだけで目の筋肉のストレッチ運動になります。
さらに、立ち上がったときに、脳の奥にある脳幹網様体が刺激を受けます。
これによって、肩が凝りかけている人は、ほとんどの場合、自動的に伸びをしたり肩を回す運動を無意識のうちに行って、僧帽筋や胸鎖乳突筋の固縮を治そうとする本能が稼働してくれるのです。
肩こりの予防に肩を回したほうがいいのは分かっていても実行できないのは、座り込んでいると、脳の脳幹網様体が活動しにくくなっているからだったわけです。
勉強中に、ときどき立ち上がる習慣は、受験生にとってとてもメリットが大きく、受験生を専門に心療している心療内科医として、自信をもっておすすめできる勉強スタイルです。
受験生の肩こりや目の疲れが、単なる長時間の勉強による疲労や、受験ストレスによる一時的な症状であった場合は、15分座って勉強、3分立って勉強のサイクルを実践すれば、それだけで不快な症状は、かなり軽くなります。
しかし、脳内の受験ストレスが一定の限界を超え、すでに「受験うつ」を発症しているか、あるいは、その一歩手前の状態になっている場合は、医療機関で専門の検査と治療をお受けになることをおすすめします。
私のクリニックでは、受験に特化した光トポグラフィー検査をお受けいただき、受験うつや受験ストレスを検査データに基づいて診断し、必要がある場合は、磁気刺激治療と受験勉強でメンタルを治す先進的なCBT治療を行っています。
これが、磁気刺激治療(受験うつ)早期合格コースです。
短期間のうちに回復するとともに、脳の働きが良くなるため、試験問題を解く能力も高まります。
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「Dr.吉田の受験うつ総合解説」
「受験うつ」は、入試の不安や受験勉強による脳疲労によって発症する「うつ症状」の総称です。
実際には、「受験うつ」には、様々な原因や様々な症状が含まれており、一つの病気というわけではありません。
そこで、このような多様な「受験うつ」を様々な角度から理解していただくために、「受験うつ対策ガイド 合格への道を開く情報が満載 Dr.吉田の受験うつ総合解説」というページを設けています。
総合解説というネーミングの通り、ありとあらゆるタイプの「受験うつ」網羅して解説しているので、ご自分の症状がご説明しているどのタイプにも当てはまらないということは、まず、ないでしょう。
また、このサイトは、「受験うつ」に関するハブページになっています。
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ぜひ、まずはこちらの記事をご一読いただきたいと思います。