受験生が自殺を図る3つの兆候
親は注意!心療内科医が指摘する見守りのポイントとは?
✓ 受験生が自殺を図る前には、3つの典型的な兆候が現れることが多く、親御様が見守ってあげるうえで、大切なチェックポイントとなります。
✓ 受験生の自殺のリスクを示す3つの兆候は、「① 弱音を吐くときの言葉のフレーズと口調の特徴」、「② 家族と顔をあわせたがらない」、「③ 学校や塾の環境の変化」です。
✓ 受験生のSOSサインを見逃さないためには、3つの兆候が、なぜ、脳と心の不調と結びついているのかを理解しておく必要があります。
✓ 受験生が自殺を図る場合、「受験うつ」、「受験無気力症候群」、「受験燃え尽き症候群」に罹患していることも多く、こちらにも注意が必要です。
今時の受験生はメンタルがとてもデリケートで、何かと悩みを抱えやすく、自殺を図るケースも少なくありません。
ただし、ほぼ全ての受験生に、自殺を図る前の段階で、その前兆とも言える独特の兆候が現れます。
ご家族は、是非、受験生をしっかりと見守ってあげて、自殺の SOS サインの兆候に気づいてあげていただきたいです。
その中でも特にチェックしていただきたいのは、自殺を図る受験生に典型的に見られる3つの兆候です。
この3つの兆候が一つも該当しない状態で自殺を図る受験生は、ほぼいません。
逆に言えば、ご家族がこの3つの兆候にしっかりと気づくことができれば、受験生の自殺を事前に食い止めることができるわけです。
自殺を図る受験生の3つの兆候とは、具体的にはどんなものなのか?
3つの兆候には、それぞれどのような特徴があるのか?
受験生を専門に診療している心療内科医としての経験と専門知識をもとに、わかりやすく解説したいと思います。
「入試はもうダメだ!」
「僕は、もう終わっている!」
自殺を図る受験生は、その前の時期に、必ずこういったネガティブな言葉を繰り返します。
もちろん、成績が伸び悩むと、どんな受験生だって、弱気な発言が出てくるものです。
ただし、自殺の前兆現象としての発言には、脳が生み出す特徴が発言の中から見て取れます。
それは、同じフレーズを何度も繰り返すということです。
「入試はもうダメだ!」でも、「僕は、もう終わっている!」でも、同じフレーズ、同じ言葉を、毎日のように何度も繰り返す場合は、メンタル面がとても危険な状態にあると言えるのです。
同じネガティブな発言をする場合であっても、脳機能が正常に働いていれば、通常は言葉の選択や表現の仕方にバリエーションが生じるものです。
ところが、脳が抑うつ状態になっていると、同じような趣旨であっても、その都度、言葉や表現を変えるというのが、なかなかできなくなってしまうのです。
脳がこのような状態になっている場合は、物事を柔軟に考える能力も確実に低下しているため、自殺以外の問題の打開策を見出すことができなくなるのです。
こうしたうつ状態がもう一段階悪化すると、自殺を図るという具体的な行動に結びついてしまいます。
是非、ネガティブな表現だというだけではなく、それが同じ言葉として何度も何度も受験生の口から出てきた場合は、受験生を慎重に見守ってあげるようにしていただきたいです。
受験生が自分の部屋や寝室にこもって、家族と顔を合わせたがらないというのも、自殺の前兆現象として、とても重要なチェックポイントです。
人間の脳は、たとえ家族とたわいのない話をするだけでも、高度な情報処理を必要とします。
たとえば、朝起きて、家族に「おはよう」と言うだけでも、脳は、目の前に家族がいて、今は朝だから「おはよう」という挨拶が妥当であるという判断をし、さらに、脳の中で「おはよう」という言葉を出すための情報処理を行うのです。
こんなことは、脳が正常だ状態であれば、ごくごく簡単に出来てしまうことです。
ところが、うつ症状になってくると、こうしたことさえも、脳は困難になってくるのです。
そのため、本人は、人と顔を合わせるということが、とても億劫に感じるわけです。
実は、家族と顔を合わせたからないということについては、今、受験生というの若い世代で、ご家族が自殺に気づく上で、大きな落とし穴になっているのです。
昔は、部屋に閉じこもっていると、メンタル面でトラブルを抱えているということは、ご家族の誰もが気づくことができました。
しかし、今は、自分の部屋にこもってスマホを眺めていることが多く、受験生として望ましい行動ではないということは親はわかっていても、それか自殺の前兆であるとは、なかなか気づけないことが多いのです。
見極めるポイントは、スマホを眺めることがとても楽しく、それがストレスの解消になっていれば、単に勉強をサボっているということで、これはこれで問題ですが、自殺の前兆とはいえません。
しかし、脳の情報処理の能力が低下していて、頭を使わずに時間をやり過ごすための手段がスマホになっているということでしたら話は違います。
こちらは自殺の危険性がありますので、親御様には注意して頂きたいということです。
これは、私が受験生専門の心療内科医として、クリニックでカウンセリングを行うようになって初めて気づいたことです。
受験生が自殺を図り私のクリニックを受診した場合に、問診を行うと、多くの場合、その少し前に塾や予備校のクラス替えを経験しています。
今、多くの塾や予備校では、成績に応じて能力別のクラス編成をしています。
クラスが上がった場合は問題ないのですが、クラスが下がった場合、ぜひ、親御様には注意をして受験生のメンタル面にも注意をしていただきたいです。
もちろん、塾や予備校のクラスが下がってしまった場合はがっかりするのは当たり前です。
しかし、これが自殺の前兆だと言えるのは、実は、他にも複数の理由があるのです。
親御様には、このことを理解しておいていただくことが、とても重要です。
受験生が「受験うつ」の症状に陥っている場合、単にメンタル面が不安定になるだけではなく、脳の前頭前野の機能が連動して低下してしまいます。
これによって、もともと学力のある生徒であっても、試験の点数は必然的に下がります。
その結果、塾や予備校のクラスが下がってしまうわけです。
さらに、こうしたことに加えて、クラスが変わった場合に、周囲の環境も変わります。
環境の変化は、うつ症状の脳にとってはそれ自体が負担になります。
そのため、うつの症状が悪化することが多いのです。
うつ病の患者さんには、引越しや長期の旅行はおすすめしていませんが、これは環境の変化がストレス要因になるためです。
ただし、受験生の場合は、塾や予備校のクラスが変わるという環境変化は、受験生個人の意思では避けようがなく、同じような脳への負担が生じてしまいます。
しかも、環境が変わる原因が楽しい旅行ではなく、クラスが落ちると言う辛い経験であった場合に、とりわけ自殺を駆り立てる危険な原因になってしまうわけです。
塾や予備校のクラスが落ちてしまった場合は、親御様には、是非とも、これまで以上に受験生のメンタル面をしっかりとケアしてあげていただきたいです。
受験生に限れば、自殺を図る場合、単なるメンタル面のトラブルといって済ませられる場合は少なく、多くの場合、「受験うつ」に陥っています。
また、「受験無気力症候群」、「受験燃え尽き症候群」を併発している場合も少なくありません。
また、受験生を放置しておくと入試に失敗してしまうことが多く、仮に自殺を回避できたとしても、それで受験生が救われるわけではありません。
お子様にきちんと脳の状態を回復させ、志望校に合格してもらうためには、専門の治療が必要です。
受験ストレスは入試の時期が近づいてくるほど悪化しますので、先送りは大変に危険です。
まずは、以下の「受験うつ(Exam Depressive Disorder)」の記事に目を通していただき、必要がある場合は、検査だけでも受けていただくことをおすすめします。
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