受験パニック対策ガイド
Exam Panic Attacks
脳を最適化して合格への道を切り拓く
✓ 試験中に頭が真っ白になり問題が解けなくなる現象は、「受験パニック(Exam Panic Attacks)」と呼ばれる症状です。最新の研究により、心の問題だけでなく、脳の不調も関与していることが明らかになりました。
✓ 緊張しやすい性格のために生じる心の問題として片付けがちですが、実際には脳機能の乱れが症状を引き起こしています。この点を理解することで、根本的な解決に向けた一歩を踏み出すことができます。
✓ 多くの受験生が「受験パニック」を気持ちの持ちようで乗り越えようとしますが、実はこれが精神的ストレスの悪化によって逆効果となることが明らかになってきました。医学的に正しい対策と治療法を用いることが重要です。
✓ この記事では、誰でも簡単に実践できる3つの受験パニック対策をご紹介します。さらに、最新の脳医学に基づいた効果的な治療法によって合格への道を切り拓く手助けをいたします。受験ストレスを軽減し、脳の働きを最適化することで、志望校への合格を勝ち取りましょう。
東京大学本郷キャンパス赤門正面
本郷赤門前クリニック
受験パニック(Exam Panic Attacks)と呼ばれる症状があることをご存知でしょうか?
入学試験の真っ最中に舞い上がってしまい、
・頭が真っ白になる
・文章が読み取れなくなる
・解き方を考えられなくなる
・記憶したはずの知識が思い出せなくなる
以上が、受験パニック(Exam Panic Attacks)の典型的な症状です。
こうした症状が出ることで、不合格になってしまう受験生が、毎年、跡を絶ちません。
受験パニックは、日本だけでなく世界的な課題でもあります。
アメリカを含む多くの国で、メンタル医学の進歩により大きな関心を集め、科学的な研究が重要な成果を上げるようになりました。
以前は受験パニックを心理面の問題として矮小化する傾向がありましたが、最新の研究により、脳の機能や神経学的な要素が関与していることが明らかになっています。
したがって、受験パニックには脳医学の視点からのアプローチが必要なのです。
また、受験パニックに至らない場合でも、多くの生徒が本試験でメンタル面が不安定になり、本来の実力を十分に発揮できていない状況にあります。
あなたもその一人かもしれません。
実は、受験生の大半が「受験パニックの予備群(Panic disorder preliminary group)」に該当すると言えます。
つまり、メンタル面のトラブルに対策をしっかり立てることで、普段の学習時間に相当する数百時間、場合によっては数千時間にも及ぶ得点力の向上に繋がるのです。
これは非常に大きなメリットですので、受験生の方々には、ぜひ関心を持っていただきたいと思います。
受験パニックには脳医学の対策が必要!
精神論ではなく科学的アプローチが合格への鍵
毎年、4月になると、学力があるにも関わらず、「受験パニック(Exam Panic Attacks)」を起こして志望校に落ちてしまった浪人生が、数多く当院を訪れます。
皆さんに共通しているのは、「受験パニック」を心の問題だと考え、自分の意志の力によって自分の気持ちを何とかしようと、あがいてしまったということです。
これは、脳医学の観点から言えば、最もやってはいけないことです。
アセる気持ちを力づくで落ち着けようとすればするほど、脳は余計にアセッてしまうように設計されているからです。
「受験パニック(Exam Panic Attacks)」は、脳が引き起こす脳機能の障害です。
精神論に基づいた非科学的なアドバイスに頼っても解決しません。
解決できるのは、脳機能の医学なのです。
具体的には、社交不安障害(Social Anxiety Disorder)やパニック障害(Panic Disorder)の治療に関するアメリカの研究など、医学的なエビデンスに基づき、科学的な対処が必要です。
その結果、大半の受験生が、本試験におけるメンタル面でのトラブルを未然に防ぎ、得点力を確実に発揮することで、高い合格率を実現できているのです。
普段の模擬テストや定期テストでは受験パニックの症状が出なかった人でも、入試の本番で初めて症状が出てしまうということも少なくありません。
入試の本番は、模擬テストや定期テストとは緊張のレベルが異なるからです。
そこで、緊張や焦りを感じやすい人は、以下、ご紹介する3つの受験パニックの予防法を頭に入れておき、いざというときのために備えておくことをおすすめします。
ご紹介する3つの方法は、いずれも脳医学で受験パニックの症状を抑える効果が実証されたものばかりです。
しかも、やり方を知ってさえいればどなたでも簡単に実践できます。
さらに時間をとらないので、制限時間が設けられている入試でも、時間を消費することはありません。
ただし、注意していただきたいのは、こうした対処法は、受験パニックの症状を一時的に抑えるだけのもので、根本的に脳を治療する効果はありません。
医学的に言うと、対処療法であって根治療法ではないということです。
すでに受験パニックの症状が出た経験のある人も、試験を受けているときに症状が出た場合は、ぜひ、ご紹介する3つの方法を実践し、症状の緩和を図ってください。
ただし、対処療法だけに頼るのはとても危険です。
必ず、後ほどご紹介する根本的な受験パニックの治療をお受けになることを強くお勧めします。
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試験を受けているときに受験パニックの症状を引き起こした場合に、最も避けなければならないのは、過呼吸の発作です。
人間の脳は、精神的に焦りを感じると、浅い呼吸を頻回に行う命令を出す性質を持っています。
それによって試験場で過呼吸を起こしてしまうことが多く、この場合は試験を中断せざるをえなくなります。
場合によっては、病院に救急搬送されることも少なくありません。
実際、私自身、医者になったばかりのころ、医療技術のスキルアップのために専門外ではありますが救命救急で勤務していた経験がありますが、入試の会場で過呼吸の発作を起こして救急搬送されてきた方を治療したことが何度かありました。
過呼吸の治療は当時、新米の医者だった私にも安心して任せられるので、私に集中的に回ってきたという事情もあるのですが、こういうケースは決して少なくないのだと痛感させられました。
いずれの受験生も過呼吸自体はすぐに収まりましたが、もちろん入試は途中退席により不合格となりますので、とてもお気の毒でした。
特に思春期の女子はもともと過呼吸を起こしやすいので、とりわけ注意が必要です。
この時の経験が私が受験生専門の心療内科を開設しようと思った一つの動機でもあります。
脳は、ゆっくりと深く息を吐く呼吸を行うと、緊張が和らぐ性質をもっており、受験パニックの症状が治まりやすくなります。
過呼吸を防ぐこうかと併せて二重にメリットがありますので、大きくゆっくり息を吐くことを、真っ先に心がけてください。
カウント法
試験を受けているときに、受験パニックの症状が出てきたら、息をゆっくりと深く吐くことに加え、頭の中で数字をカウントしてください。
これはメンタル医学でカウント法と呼ばれている対処法です。カ
ウント法はもともとは、怒りを抑えるアンガーマネージメントの研究で開発された手法です。
怒りも恐怖心も脳内の扁桃体という部分で作られます。
普段はそれを脳の前頭前野と呼ばれる部分で抑え込んでいるのでパニック症状は起きないのですが、受験パニックの場合は、扁桃体が暴走するため、前頭前野の歯止めがかからなくなって生じてしまいます。
これに対し、数字をカウントするのは脳の前頭前野が行う作用なので、これにより扁桃体の暴走を抑える機能が強化されるのです。
もちろん、ゆっくり時間をかけて延々と数字をカウントしたほうが効果は高まりますが、そうすると現実問題として試験の制限時間がなくなってしまいます。
おすすめしているのは、ゆっくり息を吐きながら1から5までトータル5秒間程度で数字をカウントすること。
この程度でもかなりの効果が生じてくれます。
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意識をお気に入りの文房具に振り向ける
試験を受けているときに受験パニックの症状が出始めたら、ご自分の意識をお気に入りの文房具に振り向けるというのも効果的な対策です。
受験パニックは不安感や焦りがもとになって症状を生み出しますが、症状が出てきたことを意識すると、それによって不安感や焦りが増幅されてしまうので、症状はより悪化してしまいます。
それを防ぐためには、ご自分の意識を何か別のことに振り向けることで、不安感や焦りの悪循環を断ち切る必要があるのです。
通常のパニック発作であれば、周囲を見渡し、目に入ったものを口に出すことなどが提唱されていますが、入試の会場で周囲を見渡すと、不正行為と見なされてしまいます。
また、周囲にはライバルの受験生や試験監督者など、心理的な緊張感を高める要因ばかりです。
ですから、注意を振り向ける対象物は、机の上にあるものに限られます。
その中で最も心理的にポジティブになれるのが、お気に入りの文房具なのです。
実際に試験で使うのは、使い勝手の良いものを選ぶべきですが、それとは別にメンタル対策として大好きなキャラクターが入った消しゴムや筆記用具などを試験会場に持ち込んでおいて、メンタルが危なくなったときに眺めるようにしましょう。
以上の3つの対処法を実践することで、受験パニックの症状を抑えることができます。
しかし、念頭に置いておくべきなのは、これらは一時的な対処法であり、根本的な治療ではありません。
受験パニックの症状が頻繁に出る場合や症状が重い場合は、専門の医療機関や心療内科を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
ご紹介する根本的な受験パニックの治療法については、後ほど詳しく説明いたします。
ここからは、受験パニックに対して医師が行う専門的な治療法について解説していきます。
実は、間違った治療法により脳機能が低下し、不合格になってしまったという受験生も、毎年4月になると私のクリニックに数多く訪れます。
私が「お薬手帳」を拝見すると、その理由が一目瞭然です。
彼らは以前通院していた病院で大量の精神安定剤を処方されていることが多いのです。
不安が強く、社会生活に支障がある場合は、精神安定剤が処方されることは一般的な治療方法ですし、保険診療としても問題はありません。
しかし、精神安定剤は大脳の機能全体を鎮静化させるため、不安の暴走を防ぎますが、同時に問題解決能力も低下させてしまうのです。
これは医学的にも当然のことです。
強力な精神安定剤を服用すれば、「受験パニック」は起こりませんし、穏やかな気分で試験に臨むことができます。
しかし、問題は解けなくなるのです。
本人は薬の作用で問題が解けなくても不安を感じることはなく、気持ちよく試験を終えるかもしれませんが、その後に控えているのは不合格の通知だけです。
受験パニックの治療では、正しい脳機能の回復を目指すことが重要です。
精神安定剤に頼るのではなく、医学的なアプローチに基づいた適切な対策が必要です。
脳機能の低下を回復させ、問題解決能力を高めることで、受験生の皆さんは本来の実力を発揮し、合格への道を切り拓くことができます。
「受験パニック(Exam Panic Attacks)」の中には、抗うつ薬の一種であるSSRIなどの薬物で改善するタイプもあります。
これらは、精神安定剤と比べれば、まだマシだというのが私の見解です。
しかし、大うつ病性障害(Major depressive disorder)の場合、SSRIは18歳未満の人には禁忌(原則として投与禁止)、24歳未満の人には慎重に投与することが求められています。
また、そもそも若年層には効果が低いという問題もあります。
さらに、ハッキリとした効果が表れるまで、長い期間がかかるという欠点もあります。
浪人を繰り返すと、将来、正社員として一流企業に就職することが困難となることを考えると、のんびり回復を待つというのは、あまりおすすめできないことです。
一方、一部の「受験パニック」は、βブロッカーという薬で治療できる場合があります。
ただし、それでも副作用がないというわけではありません。
そこで当院では、いきなり薬物を投与することは行いません。
患者さん一人ひとりの状況を検査データをもとに十分に評価し、できる限り薬物に頼らない最適な治療プランを提案しています。
受験パニックの治療においては、薬物よりも総合的なアプローチが効果的であり、将来の成功への道を開くための重要なステップとなることでしょう。
ここからは、最新医学に基づき、薬に頼らず「受験パニック」を根本的に治療する2つの方法について解説していきます。
・心臓呼吸法(Coherent Breathing )
・系統的脱感作療法(Systematic desensitization)
心臓呼吸法(Coherent Breathing )
メンタル安定と受験ストレスの軽減への道
脳の視床下部(Hypothalamus)は、呼吸と心臓の拍動と密接に関連しており、呼吸の影響を強く受けていることが分かっています。
心臓呼吸法は、この関係を活用して身体と心の健康を促進する効果的な方法です。
心臓呼吸法は、専用の装置を使用して呼吸を調節し、心拍の揺らぎをランダムな乱れからサインカーブの形状に近づけます。
これにより、心拍変動を安定させることで、心身の安定やメンタル面の暴走を防ぐ効果が得られます。
また、心拍変動のパターンが均整を保つことで、脳の視床下部の機能も安定し、パニック症状を起こしにくい脳の状態に変わっていきます。
特に受験ストレスなど心のゆがみに悩む人にとって、心臓呼吸法は有益な治療法となり得ます。
この方法は、自律神経のバランスを整え、リラクゼーションを促進するため、受験期間や緊張の高まる状況において心の安定を取り戻すのに役立ちます。
心の乱れを改善することで、受験生の心理的な負担を軽減し、集中力やパフォーマンスの向上にも寄与します。
系統的脱感作療法(Systematic desensitization)
受験に対する考え方を制御することにより、試験場で最大の能力を発揮できるように改善できます。
こうした心理訓練は、従来、非科学的な精神論に基づいて行われることが多く、これが逆効果となって、かえって受験生の能力を低下させてしまう場合が少なくありませんでした。
しかし、最近の脳科学の進歩により、扁桃体を中心とした脳のメカニズムに合致した方法が開発され、アメリカを中心に大きな成果を上げています。
私のクリニックでも、こうした方法をいち早く取り入れ、日本の受験制度に合致した形で導入しています。
参照した学術論文のリスト
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③ Zhang, N., & Walton, D. (2018). Why So Stressed? A Descriptive Thematic Analysis of Physical Therapy Students' Descriptions of Causes of Anxiety during Objective Structured Clinical Exams.. Physiotherapy Canada. Physiotherapie Canada.
④ Reeve, C., Bonaccio, S., & Winford, E. (2014). Cognitive ability, exam-related emotions and exam performance: A field study in a college setting. Contemporary Educational Psychology.
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⑧ Alammari, M., & Bukhary, D. (2019). Factors contributing to prosthodontic exam anxiety in undergraduate dental students. Advances in Medical Education and Practice.
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⑪ Ramezani, J., Hossaini, M., & Ghaderi, M. (2016). THE RELATIONSHIP BETWEEN TEST ANXIETY AND ACADEMIC PERFORMANCE OF NURSING AND EMERGENCY MEDICAL TECHNICIAN STUDENTS. Education Strategies in Medical Sciences.
⑫ Khoshhal, K., Khairy, G., Guraya, S., & Guraya, S. (2017). Exam anxiety in the undergraduate medical students of Taibah University. Medical Teacher.