光文社新書「受験うつ」第1章より
・・・受験に力を入れる裕福な家庭では、幼い頃からさまざまな習い事をさせているケースが多いようです。
これも受験うつの隠れた要因となっています。
昔は、どんな習い事でも、先生は師匠で生徒は弟子という上下関係が明確でした。
しかし、現在の幼児教室は、そのような考え方では人気が出ないため、子どもの機嫌を損なわないよう、とても大事に扱います。
その結果、あたかも子どもは王様、先生は召使といった関係が成り立ってしまうのです。
これが子どもの自己愛をさらに膨らませてしまって受験期のうつ病につながってしまいます。
実際、受験うつのために不登校になった高校生を問診すると、授業の進め方や宿題の出し方について学校の先生が自分の思い通りにしてくれないと、イラ立ちを募らせているケースが少なくありません。
数十人の生徒を相手にする高校の先生が一人の生徒の思い通りにならないのは、普通に考えれば当たり前のことです。
なぜ、こうした焦燥感が生じるのかカウンセリングを進めると、幼児期に習い事の教室で自分中心に進めてもらった原体験が心の中にあり、先生は召使なのだといった観念が根付いてしまっているという特有の心理が垣間見えてきます。
さらに最近では、学習塾も先生1人に対して生徒も1人という個別学習が増えてきました。
これも自己愛を膨らませる大きな要因となっており、注意が必要です。
受験うつに陥った生徒の中には、うつ症状のため高校には通学できないけれども、個別学習の学習塾には元気に通学できるというケースがかなりあります。
個別学習であれば、先生は自分を王様扱いにしてくれるので気持ちよく授業を受けることができますが、学校では特別扱いしてもらえないので、それが我慢ならないのです。
だったらお金さえあれば全て個別学習を受けさせればいいではないかと思われるかもしれませんが、これでは根本的な解決にはなりません。
なぜなら受験というのは出題科目も出題範囲も、そして一つ一つの設問も、すべて出題者が決めることです。
その与えられた秩序に合わせることがすべての受験生に求められているのです。・・・・
光文社新書「受験うつ」第1章より
「受験うつ どう克服し、合格をつかむか」
光文社新書
吉田たかよし 待望の新刊本!
12月16日、発売決定!
<目次>
第1章 増える受験うつ
第2章「受験うつ」のメカニズム
第3章 受験うつは答案用紙に表れる
第4章 間違いだらけの治療法
第5章 親のひと言が子どもを受験うつにする
第6章 うつにならない勉強法
第7章 親のコーチングで結果は出せる
<内容紹介>
未成年のうつ病、しかも、ストレスが増える受験期に突然発症する人が急増している。
子どもと大人では症状が大きく異なるため、親も受験生本人も発症に気が付かない
ケースが多いのが実情である。
中学受験ではもちろんのこと、高校受験や大学受験で頻発しており、受験生専門外来の
私のクリニックにも、勉強が手につかなくなった多くの受験生が来院している。
受験期のうつで人生を狂わさないために、受験生本人が、家族ができることは何か?
また、脳機能から考えたストレス管理や効率の良い勉強法もまとめた、
うつ病の有無を問わず受験を控えたすべての方に必見の書。