光文社新書「受験うつ」第1章より
・・・・H君には、もうひとつ、受験生に新型うつが発症した場合に見られる特徴的な症状が出ていました。
それは志望校の選択についてです。
もちろん、こんな受験生活を続けていたら、一流大学に合格はできつはずはありません。
彼が進学を考えている医学部に限れば、現状の成績では国公立大学は絶望的で、
私立大学の下位の医学部に受かるか滑るかといったところです。
しかし、不思議なことに、H君自身は東大の理科三類(医学部進学)以外は受験をしないといいます。
そこで、親が「東大理三に行きたければ、可能な範囲で勉強しろ」と注意すると、H君は、とたんに声を荒げ、家庭内で暴れ出すそうです。
「それなら私立大学の医学部に志望を変えたらどうか」と親がアドバイスをすると、
「馬鹿な奴らが行く大学なんて、俺はごめんだ!」と取り合ってくれません。
このように、根拠のない自己評価の高さと、自分だけは特別な扱いを受けて当然の存在なのだという特権意識は、新型うつに特徴的に見られる心理傾向です。
これが受験生に発症すると、心理の偏りはそっくりそのまま合格したい大学の偏差値に置き換えられてしまうので、A君のように現実をはるかに超えた志望校の設定に結びつくのです。
ただし、模擬テストを繰り返し受ければ、一流大学に合格する見通しは幻想であることが本人にもわかります。
H君もやがて現実をつきつけられ、
「俺はもうダメだ」、「東大理三に通らなければ死ぬしかない」とふさぎこんでしまったのです。
新型うつの場合、自分が好きなことなら楽しそうにやるので、親は単なるサボりだと思い、さかんに「勉強しろ」と声をかけます。
しかし、受験うつに陥ると、勉強しようとしても、脳機能の問題で本人が思っているやり方では十分に勉強するということができなくなっているのです。
H君の場合もそうですが、結果として焦燥感を募らせるしかなく、
本人に悪気がなくても親に暴言を吐いたり家庭内で暴れたりしてしまうことになるわけです。・・・・
光文社新書「受験うつ」第1章より
「受験うつ どう克服し、合格をつかむか」
光文社新書
紀伊國屋本店 ベストセラー達成!
新書販売ランキング1位
<目次>
第1章 増える受験うつ
第2章「受験うつ」のメカニズム
第3章
受験うつは答案用紙に表れる
第4章 間違いだらけの治療法
第5章
親のひと言が子どもを受験うつにする
第6章 うつにならない勉強法
第7章 親のコーチングで結果は出せる
<内容紹介>
未成年のうつ病、しかも、ストレスが増える受験期に突然発症する人が急増している。
子どもと大人では症状が大きく異なるため、親も受験生本人も発症に気が付かないケースが多いのが実情である。
中学受験ではもちろんのこと、高校受験や大学受験で頻発しており、受験生専門外来の私のクリニックにも、勉強が手につかなくなった多くの受験生が来院している。
受験期のうつで人生を狂わさないために、受験生本人が、家族ができることは何か?
また、脳機能から考えたストレス管理や効率の良い勉強法もまとめた、うつ病の有無を問わず受験を控えたすべての方に必見の書。
紀伊国屋新宿本店・週間ベストセラー